完全攻略!逓増定期保険の名義変更(契約者変更)プラン

2015年9月11日
法人保険
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法人生命保険の活用テクニックとして注目を集めています「逓増定期保険の名義変更(契約者変更)プラン(以下、MHP)について、メリットとデメリットについて解説を行います。なお逓増定期保険についての詳細解説は別ページにて行っておりますので、そちらをご参照下さい。

※本編では逓増定期保険の基本についてご理解をいただいているという前提で進めて参ります。

社長必見!!誰も知らない逓増定期保険の最強の活用方法

 1. 逓増定期保険の名義変更(契約者変更)プランとは?

生命保険契約の契約者を変更する形態として考えられるのは、「個人→個人」「個人→法人」「法人→個人」「法人→法人」の4つのパターンです。

最近、特に注目をされているMHPについては、「法人→個人」の形態であります。他の形態についても注目すべき点は数多くありますが、ここでは割愛をさせて頂き「法人→個人」の変更について解説を行います。

2. 契約者変更を行うメリット

法人契約の生命保険を個人へ名義変更をするメリットは、以下の内容であると一般的には言われています。

<メリット1>法人で支払う保険料を損金計上する事が出来る

法人で支払う保険料のうち、保険種類や契約形態・保険期間によって損金計上のルールは詳細に定められています。これに則った形で契約をすれば支払保険料は損金計上する事が出来ます。個人で契約した場合には生命保険料控除の枠内でしか所得から控除が出来ませんので、一旦法人で契約し、その後に個人へ名義変更したとしても、法人契約期間中に法人が負担した保険料は損金処理が可能です。

<メリット2>名義変更後、個人が保険料を負担する場合には、契約した当時の保険料のまま契約が継続するために保険料が上がらない

個人で保障が必要な場合、その時点で新契約を締結するとその時点の年齢で保険料は計算されますが、以前に法人で契約していたものであれば、保険料は当時の年齢のままの保険料で個人にて継続する事が出来ます

<メリット3>法人で契約した後、被保険者が罹患し、新たに保険契約が出来ない場合などは、名義変更時は診査を行わないので個人へ保障を移転する事が出来る

個人で保障が必要になっても、病気を発症した後であれば保険加入が出来ないケースがあり得ます。この場合、個人に保障が必要であれば法人契約の契約者を変更すれば個人で保障を確保する事が出来ます。

<メリット4>名義変更時における保険契約の評価は、解約返戻金相当額で行うので、資産計上されている契約については名義変更に伴う損失が計上出来る

保険契約を名義変更する際の保険契約の評価については、所得税基本通達36−37を準用して、解約返戻金相当額で行うと言われています。

所得税基本通達36−37(保険契約等に関する権利の評価)
使用者が役員又は使用人に対して支給する生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約に関する権利については、その支給時において当該契約を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額)により評価する。

解約返戻金で評価をした場合には、資産計上額より解約返戻金が少ないと、名義変更に伴う雑損失が計上されます。ただし名義変更時の評価を資産計上額(簿価額)で行う考え方もありますがここでは割愛します。

<メリット5>法人で保険金を受取った場合、益金計上をするケースでも個人で受取った場合には非課税となるケースがある

【所得税施行令30条1項(非課税とされる保険金、損害賠償金等)】
損害保険契約(省略)に基づく保険金、生命保険契約(省略)又は旧簡易生命保険契約(省略)に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)

【所得税基本通達9-21】
疾病により重度障害の状態になったことなどにより、生命保険契約又は損害保険契約に基づき支払を受けるいわゆる高度障害保険金、高度障害給付金、入院費給付金等(一時金として受け取るもののほか、年金として受け取るものを含む。)は、令第30条第1号に掲げる「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」に該当するものとする。

ただしこの場合、法人で支払った保険料相当額が給与として課税対象とみなされるケースもありますので十分注意が必要です。特に平成30年以降に名義変更した契約で、保険金・給付金等が支払われる場合には、保険会社が税務署に提出する支払調書に保険料負担者が誰であるかを明記することになりましたので、特に注意が必要です。

<メリット6>解約返戻金が低い時に低評価で法人から個人へ名義変更し、個人で保険契約を継続すれば保障を確保する事が出来る。

終身保険や終身医療保険などを短期払にて法人で契約し、保険料払込が満了した時点で個人へ名義変更すれば、個人は低評価で保険契約を引き継ぐことが出来て、一生涯の保障を確保する事が可能になります。

<メリット7>解約返戻金が低い時に低評価で法人から個人へ名義変更し、個人で保険料を支払って高額な解約返戻金を受取る事で資産移転が出来る。

逓増定期保険などで一定期間解約返戻金が抑制されているタイプを活用し、解約返戻金が少ない時点で法人から個人へ名義変更し、その後個人で保険料支払を行い、解約返戻率がピークに達した時点で解約すれば、個人は多額な解約返戻金を受取る事が出来ます。
※ 個人受取時の一時所得課税については平成23年の税制改正でルール化されました。
以上の理由により、逓増定期保険を当初は法人で契約し、その後に個人へ契約者を変更するプランに「メリットがある」とされて採用されているケースが多い様です。

3. 名義変更プランの事例

実際に逓増定期保険を名義変更する効果を例を使って解説します。

■ 保険効果のイメージ(年払保険料1,000万円と仮定)

  累計保険料 解約返戻金 解約返戻率
1年目 1,000万円 0円 0%
2年目 2,000万円 80万円 4%
3年目 3,000万円 300万円 10%
4年目 4,000万円 800万円 20%
5年目 5,000万円 4,750万円 95%

この逓増定期保険を法人にて契約し、4年間は保険料を支払います。そして5年目の保険料を支払う前に個人へ名義変更を行い、5年目は個人で保険料を負担します。

すると個人負担は1年分の保険料1,000万円と名義変更時の買取資金である800万円の合計1,800万円の負担を行います。そして5年目保険料を支払った後に解約すると4,750万円の返戻金を受取る事が出来ます。

実質的に4750万円−1,800万円=2,950万円ほど増えた事になります。ただこの増加分に対しては一時所得課税が発生しますが、特別控除50万円を差引いた後に1/2を掛ける事が出来ますので、1,450万円に対して税率を掛けた分を納税する事になります。

4. 逓増定期保険の名義変更(契約者変更)プランのリスク

このMHPにおいては以下の手続きを行います。
1) 法人で支払った保険料についてはルールに従って正しく経理処理を行った。
2) 法人から個人へ名義変更を行う際に、取締役会(理事会)決議を取った上で、適切な評価を行った上で資金を個人から法人へ移動させた。
3) 個人で解約返戻金を受取った際には受取った年度に確定申告を行って納税をした。

これら3つの手続きはすべて正しいのですが、そもそも「なぜ名義変更を行ったのか?」という理由が重要になります。この名義変更理由によって「脱税か租税回避か?」を決定付ける要因になります。

4-1. 節税ではない!租税回避行為である

ここで重要なのは、MHPは「節税」ではないという事です。

節税とは税法が想定をしている範囲内で行う行為であり、MHPは「法人契約を個人に名義変更する」という税法が想定していない行為を行う事で課税要件を除外する「租税回避行為」なのです。
租税回避行為とは、税法が想定している範囲を超えたスキームでなおかつ仮装・隠蔽を行わない処理を言います。

税法が想定している範囲とは、例えば小規模企業共済や中小企業セーフティー共済を活用したプランで、両者とも「合法的な節税効果」を得る事が可能なプランと言えます。

それに対して仮装・隠蔽とは、例えば解約返戻金を受取った際、支払調書が出ない事を利用し申告をしないケースで、これは明らかに 「脱税行為」として刑事罰の対象となる行為です。
MHPは、法人での保険料支払→名義変更時の処理→個人解約時(保険金受取時)の申告、というすべての行為を隠さないので、仮装・隠蔽ではありません。しかしながら、法人から個人へ名義変更を行う事などは、税法上では想定をしていない行為であるために、 「なぜ名義変更を行ったのですか?」という理由を問われる事になります。

この理由が、「法人での保険解約に伴う益金課税を逃れるため」だとか「法人税の節税のため」と認定されると、 法人税法132条の同族会社の行為計算否認に該当して損金否認される事になります。

法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)
税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。

一 内国法人である同族会社
二 イからハまでのいずれにも該当する内国法人
イ 三以上の支店、工場その他の事業所を有すること
ロ その事業所の2分の1以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。
ハ ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の3分の2以上に相当すること。
(以下省略)

4-2. 医療法人における問題点

医療法人においては、同族会社ではないとされていますので、前述の法人税法132条は適用されないという考え方もあります。ですが医療法人の場合には「医療法人の非営利性」を定めた医療法54条にMHPは抵触します。

第54条 医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。

なお、MHPは剰余金の配当ではないので問題ないと思われる方もおられるかも知れませんが、厚生労働省ホームページには医療法人の剰余金の配当に類似する行為として以下の文言があります。

<厚生労働省ホームページより抜粋>
配当ではないが、事実上利益の分配とみなされる行為として、次のような事例については、配当類似行為として禁止。

  • 近隣の土地建物の賃借料と比較して、著しく高額な賃借料の設定
  • 病院等の収入等に応じた定率賃借料の設定
  • 病院等の本来業務や附帯業務以外の不動産賃貸業
  • 役員等への不当な利益の供与 等

一番最後の「役員等への不当な利益の供与」とみなされてMHPは医療法54条違反となり、違法行為となります。

まとめ

法人契約の生命保険を個人に名義変更するには、誰しも納得出来るような理由がなければなりません。「法人税を節税するため」(本当は節税ではないのですが・・・)とか「役員報酬で貰うよりも税金負担が少ないため」という理由で契約者を変更することは、納税を逃れるために行ったと見なされて、税務署から指摘をされて余計な納税(過小申告加算税・延滞税など)が発生するリスクがあります。

懸念されるのは、安易にMHPを提案している保険営業パーソンが余りにも多いということです。少なくともMHPという活用法が「節税」ではなく「租税回避行為」という認識すら持っていなければ、そんな保険営業パーソンから加入するのは止めておいたほうが良いでしょう。

あとは、このMHPを提案して保険契約をしておきながら、途中で退職したりして最後まで責任を取らない保険営業パーソンが多いことも残念でなりません。本プランを検討している経営者の方は、提案してきた保険営業パーソンに対して「最後まで面倒を見てくれますね?」と言質を取っておいた方が良いでしょうね。

この逓増定期保険の名義変更(契約者変更)プランを検討される場合には、税務上のリスク(医療法人においては医療法上のリスク)をキチンと把握された上で、ご検討下さいますよう、お願い申し上げます。

著者


奥田雅也(NPO法人全日本保険FP協会 副理事長)

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