法人生命保険の注意点!「実質返戻率」のウソ!

2015年6月8日
法人保険
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法人で生命保険を加入するメリットの一つとして、支払保険料の一部または全部が損金に計上されることにより、税金が安くなることが挙げられます。
どれだけメリットがあるかを表す指標として「実質返戻率」というものが使われていますが、これは何なのでしょうか?

今回は実質返戻率について詳しく解説いたします。

1. 実質返戻率とは?

法人の生命保険設計書には「実質返戻率」という表記がどの保険会社の設計書にもあります。この「実質返戻率」とは何を表しているのでしょうか?

実際に法人保険の設計書を元に見てみましょう。

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※ 法人実効税率を35%にて計算

一番右端にあるのが、「実質返戻率」です。保険会社によって表現は違いますが、法人で生命保険に加入するメリットを表す一つの指標とされています。

2. 実質返戻率の計算方法

この「実質返戻率」は、法人で加入した際に支払保険料が損金に算入出来ることによるメリットを表しています。

具体的な計算方法は以下の通りです。

解約返戻金÷(損金算入保険料×実効税率)=実質返戻率

保険料を支払った事により減少した税負担を考慮した「実際に負担した保険料」に対して契約を解約した場合に支払われる解約返戻金がどのくらいの割合で戻って来るか?を表している指標です。

この「実質返戻率」が100%を超えると、払った保険料から安くなった税金を差し引いた金額より解約した際に戻ってくる返戻金が多いということになりますから、「法人で生命保険に加入したメリットがあった」ということになります。

※実際には、解約金は益金計上をしなければならないケースも多くありますので、単に保険を解約しただけではメリットがありません。

3. 実質返戻率のウソ

そもそもこの「実質返戻率」が表しているほどのメリットが本当にあるのでしょうか?答えはこの実質返戻率ほどのメリットはありません。

実質返戻率が正確な指標ではない理由を説明してまいります。

3-1. 法人実効税率の変動

保険設計書では、法人の利益に課税される「実効税率」を固定して表記されます。例えば現在であれば35%程度の率で計算がされている場合が多いと思います。

ですがこの実効税率は変動しますので、正確な率ではありません。

そもそもご存知の通り、政府の経済政策として法人実効税率が引き下げになる傾向にあり、以前は50%近くあった法人実効税率は現在では35%程度にまで引き下げられています。過去には震災復興のために一時的に「特別税」が加算されましたし、将来的には20%台にまで引き下げられようとしているのですから、この実効税率は変動します。

3-2. 法人所得額による変動

法人の所得に対する課税は、「法人税」「住民税」「事業税」の3種類あり、法人の所得額によって適用される税率が異なります。簡単に言えば「400万円以下」「400万円超から800万円以下」「800万円超」で適用される率が変わります。

法人の事業年度によって所得額は変動しますから、一律ではありませんし、800万円以下の利益であれば20%程度の実効税率で済むために「一律35%」で計算をしてもそれだけの税負担が減っているわけではありません。

3-3. 資産計上部分の税負担が考慮されていない

上記2つは、税率の問題でありますので「目安」として考えるのであれば、率だけに注意すれば済みます。ですが、そもそもこの「実質返戻率」には大きな欠点があります。

支払保険料の全額が損金になるタイプの保険であれば良いのですが、支払保険料の一部でも資産計上になる部分がある保険の場合には問題が発生します。

実質返戻率を計算するこの計算式「解約返戻金÷(損金算入保険料×実効税率)」では、損金部分の安くなった税金だけが考慮されています。資産計上になった部分の保険料は損金にならないので利益が出ている法人においては、税の負担が発生します。

具体的に説明しますと、保険料100を支払ったとして、半分の50が損金になるということは、50だけ利益が減少します。残りの50は資産に計上されますので、現金は減少しても利益は減少しません。

このことは決算書において、流動資産である現預金が固定資産である積立金勘定に変わっただけです。利益を押し下げない資金負担は、税金を支払った後に残った資金で負担をしている訳ですから資産計上部分は税の負担をしていると言えます。

そのためにこの部分の保険料を考慮して、損金になった部分だけを見てメリットを計算するのは正確な効果を表しているとはとても言えないでしょう。

4. 正しい「実質返戻率」の考え方

そこで「正しい実質返戻率」は先の例を使って以下のように計算すれば非常にスッキリとします。

<契約例>
支払保険料累計100
損金計上累計50
資産計上累計50
解約返戻金90
解約返戻率90%
実効税率35%

解約返戻金90−資産計上累計50=40(実質解約金)
損金計上累計額50×実効税率35%=17.5(軽減税額)
損金計上累計額50—軽減税額17.5=32.5(実質保険料)
実質解約金40÷実質保険料32.5=123%(実質返戻率)

※損金部分単純返戻率
40(実質解約金)÷50(損金計上累計)=80%

要するに損金になった部分の保険料だけを抽出して軽減税額を算出し、その差額である実質保険料と解約金の中から資産計上部分を差し引いた金額で割ることで本当に正しい「実質返戻率」が算出出来るのではないでしょうか?

全額損金で解約時100%返戻の経営セーフティー共済のような商品なら別ですが、全額損金計上が出来てそこそこの返戻率が確保出来る保険商品と損金率は落ちるが返戻率が高い保険商品ではどちらにメリットがあるのか?が明確になります。
<単純返戻率>
全損:解約返戻率80%
半損:解約返戻率90%
1/3損:解約返戻率93.5%
1/4損:解約返戻率95%

これらを比べた時、どの商品が一番良いのでしょうか?答えとしてはすべての商品が損金部分の単純返戻率は80%となり「実質返戻率」も同じになります。

5. 資金繰りへの影響

上記の例ですと、保険に加入するメリットは同じであったとしても、支払保険料すべてが損金に計上出来る累計保険料100と支払保険料の1/4しか損金に計上できない保険料100では、同じ保険料100の負担でもキャッシュフローの与える影響は全く違います。

さらに言いますと保険商品として支払保険料の全額が損金計上出来る商品は返戻率が落ちてきていますが、資産計上割合が高い商品であれば返戻率は高くなりつつあります。

そのために保険加入効果を高めるには、損金算入割合を落とした方がメリットはありますが、資金繰りに与える影響も大きくなりますので、この場合には契約者貸付や保険証券担保融資といった資金調達の手段を同時に考えておく必要があるでしょう。

まとめ

法人で生命保険を加入した場合に得られる税メリットを、正確に計算することは毎年の利益額によって税率が変わるためにかなり困難です。ただ一つのポイントとしては、ここで解説をしたように損金計上額に対して解約時には幾らの返戻金が得られるのか?を確認することで、ある程度のメリットを把握することが出来ます。

決して保険設計書に記載されている「実質返戻率」に惑わされることなく、保険商品が生み出す効果を確実に見極めて下さい!

著者


奥田雅也(NPO法人全日本保険FP協会 副理事長)

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